向田邦子「う」のひきだしと「ままや」の思い出
このブログの「注目記事」の欄で、最近じわじわと上がってきている去年の記事↓
かごしま近代文学館 「続 向田邦子の装い」 にうっとり - 鹿児島の生活 ことり日記
3月2日までの催しなので、もうちょっとで閉幕ですね。
おばちゃん(私)がひっそりとやっているブログでアクセス数が伸びるのはたいてい食べ物の記事。
食べ物が出てこない、催し物の記事にもかかわらず伸びるなんて。「向田邦子さんってファンが多いんだなあ」と改めて思う今日この頃です。
で、何か他に書くことないかな~?と考えて、思いついたのが「う」のひきだし。
昔買った本で、そんな見出しがあったような…ゴソゴソ(本を探す音)
…見つけた‼
え~っといつの本だ?奥付を見ると…1989年。
26年前。平成元年。
これ買った時、若かったんだなあ…(遠い目)
この本は、今でも入手可能です。
この中に“「う」の引き出し”というページがあります。
向田さんの家には、お気に入りのお店のお気に入りの食べ物=「うまいもの」のメモやパンフレットを入れていた引き出しがあったそうで、実際の商品を紹介しています。
この中から、今でも鹿児島で購入できるものを集めてみました。
勘場 (かんば) 蒲鉾店の「つけ揚げ」
鹿児島以外の方には「さつま揚げ」と言った方がわかりやすいでしょうか。
魚のすり身を油で揚げたものです。揚げたてはもちろん、冷めてもおいしい。
ごはんのおかずに、お酒のつまみにと大活躍のお惣菜です。
↓ これは地元の百貨店、山形屋の地下で購入。特売で税込600円。
鹿児島には「つけ揚げ」のお店がいくつもありますが、ここのはわりと甘めの味付けだと思います。美味しいですよ。
HPはこちら 鹿児島・いちき串木野 さつまあげの勘場蒲鉾店
明石屋の軽羹 (かるかん)
山芋と米粉で作る蒸し菓子です。1個税別180円。
↓ こちらは軽羹饅頭 (かるかんまんじゅう) 。中にこしあんが入っています。
1個税別140円。あんが入っていない方がお値段高いです。
もちろんどちらもそれぞれに美味しいです。山芋入りのお菓子って珍しいですよね。
明石屋のHPはこちら 鹿児島土産にかるかん・かるかん饅頭を|御菓子司 明石屋
平田屋(ひらたや)の両棒餅(じゃんぼもち)
10本入り税込み500円。
ものすご~く乱暴かつ大雑把に説明すると、「2本の棒を刺した平べったいみたらし団子のようなもので、つゆだく」と言えば想像しやすいでしょうか。
子どもの頃、磯海水浴場で泳ぎ疲れた後、両棒を食べるのが定番でした。
温かくて、甘くて、冷えた体にじんわりしみるんです。
鹿児島でしか味わえない、しかも磯周辺にお店が集中している、ちょっとディープな食べ物です。
この「向田邦子の手料理」という本を買った当時は、見ながらよく料理を作っていました。
特に「さつま芋のレモン煮」は簡単なこともあり、繰り返し作っていて「こういうのを向田さんは召し上がっていたのか~」と、ニヤニヤしながら食べていたっけ。
その後、今から20年くらい前、鹿児島の百貨店、山形屋で向田邦子展が開催されました。
向田さんの愛用の品々を見ているうちに、向田さんが生前開店して、妹の和子さんがきりもりしてらっしゃるお惣菜とお酒の店「ままや」に行ってみたくなりました。
「ままや」の存在は以前から知ってはいたものの、東京・赤坂のお店だったので、田舎者でなおかつお酒に弱い私にとっては、パリの三つ星レストラン(もちろん行ったことない)と同じくらい、遠くて敷居の高い存在。
でも、やっぱりど~しても行ってみたくなり、がんばって1998年の冬に訪問しました。
お料理はどれもとっても美味しかったけれど、特に記憶に残っているのが「さつま芋のレモン煮」です。
私が作っていたのと全然違う、同じ料理とは思えないくらい素晴らしかった。
もちろん、私の料理の腕がアレなのもあるんでしょうが…。
さつま芋の切り口も美しく、まったく煮崩れていないのに、中まできっちり味がしみてる! おつゆも澄んで美しい! 甘味も上品! プロってすごい! と感動しました。
来てよかった。いつかまたぜひ来たい!と思いつつお会計をしようとすると、レジには向田邦子さんの妹の和子さんが‼ もうアガりまくったのを覚えています。
勇気を出して「鹿児島から来ました」というと、「あら」と笑顔を見せてくださりながら、「ままや、3月末で閉店するんですよ」と衝撃のお知らせ。
渡された挨拶状を見ると、「ままや」も20周年を迎え、姉(向田邦子)の遺品もかごしま近代文学館に寄贈することになり、ご自分も「ままや」を卒業(閉店)するとのことでした。
山形屋で見た向田さんの遺品は、また鹿児島に戻ってくるのか…
「ままや」の閉店は残念だけど、思い切って来てよかった。
ぎりぎり間に合ってよかった…。
嬉しいような、残念なような、興奮していろんな感情がごっちゃになった夜でした。
今、向田さんゆかりの品々が、自分の住む街にあるかごしま近代文学館に納められ、思いついた時にいつでも行けるのはとてもうれしいことです。
けど、欲を言えば…欲を言えば…もう絶対無理なんでしょうが、無理を承知で夢を語ります。言っちゃいます。だって個人のブログだし。ひとりごとだし。
向田さんの展示室に猫がいればいいのに。
もちろんリアル猫。
向田さんが飼っていたマミオと同じコラット種の雄猫。
展示室に入ると、向田さんの愛用していたソファーに座ってたりするのだ。
「ミャ~」とか鳴いたりするんだけど、決してすり寄って来たりせず、こちらを一瞥(いちべつ)すると「フンッ」て感じで机の上に移動したり、気ままに歩きまわったりするのだ。
ああ、思い浮かべるだけでワクワクする。
もし実現したら、年間パスポート買って通いつめちゃうんだけどなあ…。